H22/6(198500Km)インテグラの補機ベルト、オルタネータ・エアコン・パワステ用が
通算使用20万Kmが近くなりましたので、報告します。実はここ数年間ベルトのこと等
忘れてましたが、あらためて思い起こしてみるとこの3本のVリブドベルトの耐久性は
大した物です。10万Km時点でタイミングベルトは交換しましたが、補機に関しては
リブ山に細かいヒビ割れがある程度だったので、その耐久性を試してみるつもりで
再使用となったわけですが、再取付後しばらくして一度張り調整をしたのみで、特に
何事も無く現在に至りました。ベルトメーカはオルタ用は三ツ星、他の2本はバンドウ
製で、3本とも4リブのベルトです。最近では複数の負荷を1本のベルトで駆動するサー
ペンタイン方式が出回ってますが、その点では1本1負荷のこの車の場合は耐久性の点で
有利だったかもしれません。
ベルトの耐久性を考える上で色々資料を調べた結果、下記が見つかりましたので参考に
していただきたいと思います。詳細は「特開2010-54403」”Vリブドベルトの寿命予測
方法”公開日H22-3-11を参照下さい。

Vリブドベルトの寿命予測方法

【課題】ポップアウト寿命に起因したVリブドベルトの寿命を正確に予測することができる
Vリブドベルトの寿命予測方法を提供することを課題とする。
【解決手段】走行実験により、Vリブドベルト1に作用する張り側最大張力に対するポップ
アウト寿命を実測する(ステップ2)。また、Vリブドベルト1の半円柱状空洞部分8に
おいて、Vリブドベルト1に作用する張り側最大張力に対する相当ひずみを算出する
(ステップ3)。そして、ステップ2で得たポップアウト寿命とステップ3で得た相当
ひずみに基づいて
作成した相当ひずみ-ポップアウト寿命グラフを用いて、Vリブドベルト1が特定使用条件で
使用されたときのポップアウト寿命を導出する(ステップ4)。 
また、本発明に係るVリブドベルトの寿命予測方法の第4の特徴は、前記物性データが前記V
リブドベルトの弾性係数およびポアソン比を含んでおり、前記特定使用条件は前記Vリブド
ベルトが巻き付けられるプーリの径および回転数、ベルト張力、屈曲径を含んでいることある。
この構成によると、物性データおよび特定使用条件として上記の物理量を用いることで、実際
の使用状況に合致した精度の高い寿命予測が可能となる本発明に係るVリブドベルト1の寿命
予測方法は様々な心線6の露出状態に対して適用することができる方法である。尚、後述する
有限要素解析法(FEM解析)により、図1に示す露出した心線6と接着ゴム層4が接触する
部分である半円柱状空洞部分8(接触部)において、要素単位の相当ひずみの最大値を、張り
側最大張力に対する相当ひずみとして算出する。
ベルトの幾何(形状)データとしては、Vリブドベルト1のリブ3形状(リブ3の幅、高さ、
両側面がなす角度、湾曲部曲率半径)、接着ゴム層4厚み、帆布5厚み等のVリブドベルト
1形状を特定するための様々なデータが入力される。また、物性データとしては、Vリブド
ベルト1の圧縮ゴム層2、接着ゴム層4、帆布5および心線6の弾性係数およびポアソン比
が入力される。
また、本実施形態のベルトの使用条件としては、図4に示すような動力伝達レイアウトでV
リブドベルト1が使用される場合におけるベルトの使用条件が入力される。即ち、Vリブド
ベルト1が巻き付けられるプーリの径及び回転数、ベルト張力、屈曲径が入力される。
尚、本実施形態では、心線6がVリブドベルト1本体から50mm以上脱落した時点でポップ
アウト寿命とした。
物性データとして、弾性係数およびポアソン比を入力した。尚、圧縮ゴム層2の弾性係数を
25MPa、ポアソン比を0.49とし、接着ゴム層4の弾性係数を5MPa、ポアソン比を
0.49とし、帆布5の弾性係数を30MPa、ポアソン比を0.49とし、心線6(ソリッド
要素)の弾性係数を1500MPa、ポアソン比を0.49とし、心線6(トラス要素)の弾性
係数を5000MPa、ポアソン比を0.3とした。
 (ポップアウト寿命の実測)
a.走行実験により、張り側最大張力値とポップアウト寿命との相関を示す参照データを得る。
走行実験は、図4に示すようなVリブドベルト1がプーリに巻き付けられた動力伝達レイアウト
で行った。Vリブドベルト1の接着ゴム層4および圧縮ゴム層2を形成するゴムとしては、
エチレン-プロピレンゴム(EPDM)を用いた。心線6としては、ポリエチレンテレフタ
レート(PET)を用いた。また、Vリブドベルト1のサイズは3PK1100を用いた。
走行実験条件としては、駆動プーリ12の直径を120mm、従動プーリ13直径を120
mm、アイドラープーリ14の直径を85mm、テンションプーリ15の直径を45mm
とした。また、駆動プーリ12の回転数を4900rpm、従動プーリ13負荷8.8Kw、雰囲
気温度120℃とした。また、図4に示す矢印A方向に加える荷重を変更することにより、
張り側最大張力値を350N/rib、320N/rib、260N/ribに設定した。そして、
各張り側最大張力値におけるポップアウト寿命を実測した。以下その結果を表2に示す。
                   - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 
図5は
表2をグラフにしたものです。本特開の内容からベルト寿命にその張力がもっとも深く関わって
いる事が分かります。この点に関してインテグラの負荷のACGを例として考えてみたいと思い
ます。特開の場合は8.8Kwですが、インテグラは1/10の容量です。これを800Wと設定して、両
者の駆動トルクを計算します。
  P(w)=2πT(N・m)×N(rpm)/60
  P=負荷容量(ワット) T=トルク(ニュートン・メーター) N=回転数(rpm)
特開の場合
  T=60P/2πN=60×8.8×1000/2×3.14×4900≒17.16(N・m)
  プーリの半径が6cmなので掛かるトルクは
  17.16×100/6=286(N)
  1リブ当りの張力は 286/3=95.3(N/rib)
インテグラの場合 800w、4000rpmとして(Eg.回転の約2倍)
  T=60×800/2×3.14×4000≒1.91(N・m)
  プーリ半径3cmとするとベルトのリブ数が4ですから1リブ当りの張力は
  1.91×(100/3)×(1/4)≒15.9(N/rib)
ベルトの最大張力を600Nとすると、1リブ当り600/4=150(N/rib)となります。
張側最大張力は150+15.9=165.9として1万時間を越える耐久性になります。
平均時速50~60Kmとして1万時間とすると50~60万Kmの寿命予測となりますが、
現実的にはこれだけの距離を走るには相当の年数を要するので、経年劣化も考えられます。
それにしてもインテグラの場合の14年20万Kmというのは現実的に納得できる数字ということ
になります。この寿命予測によれば、リブ部分の細かいヒビ割れはほとんど寿命には関係
しないように思われます。インテの場合10万Kmの時点ですでに細かいヒビ割れが見られた
のですが、その後再使用して20万Kmに至った事を思えばこの事が理解出来るし、先に記した
ベルト各部の弾性係数で心線部分の数値が桁違いに大きいのを見ても理解出来ます。結果と
しては、外観検査での寿命予測は心線6部分の状態を見るのが適切である事が分かります。
又今回の結果から、ベルトの張りすぎは寿命に大きく影響する事が理解出来ます。適切な
張りを保って使用すれば、長寿命が期待出来るわけです.ここで今仮にベルトの張りを強く
して1000(N)位で調整したとすると、1000/4=250となりポップアウト寿命は一気に低下し
何百時間の単位になってしまいます。ベルトの張力がいかに寿命に影響するかが分かります。


                         図4           

図6

図中黒ラインは使用ベルトは3PK、赤ラインはインテグラの4PKの場合を示します。
張側最大張力はそれぞれ360-260(N/rib)、320-240、260-200となります。駆動プーリの
回転数を特開の場合の4900rpmに対して、インテグラでは2000rpmと設定しました。

ACGベルト交換

H23/8/1(208900Km)デスビキャップ&ロータ交換の為、車の下に潜ってクランクプーリを 回している時、ACGベルトの長手方向に約20Cmの亀裂が有るのを発見しました。2枚目の 写真は割れ目の断面を見たものですが、茶色に光って見えるのが心線でその周囲が接着 ゴム層です。上記にもあるように接着ゴム層に比べて心線の弾性係数は非常に高く、糸の 様に縫い込まれた心線は健在ですが、接着ゴム層の部分で裂けています。この様な状態でも まだベルトは切断する事はなく、鳴きやスベリはありませんでした。しかしさすがの私も ここまで来れば交換を決断しました。新しいベルトは予め購入していましたので、慌てる事 はありません。なおA/CとPSベルトは万が一切れるような事があっても走行にそれ程支障は ないものと思い、なお使用を継続して実験を続けたいと思います。叉プーリに接触する圧縮 ゴム層ですが、写真で見ても分かる様にこの部分の細かなヒビ割れは山の高さの1/2程度に 達しているものの、これは10万Kmの時点ですでに発生してたわけで、ベルトの寿命には さほど影響は無いものと思われます。リブ山が欠けたりすれば別ですが、私的に申し上げれば むしろこのひび割れは、プーリ間の摩擦抵抗の増加に寄与すると思われるのですがいかがな ものでしょうか。従って私の場合ベルトの張力はあまり強くは無かったのですが、スベリとか 鳴きは出てませんでした。ここまでベルトを使う人は日本中でも珍しいと思うのですが、 Vリブドベルトの耐久性を知る上で1つの目安として参考になるのではないでしょうか。 ベルトのリブ山正面(左からPS,A/C,ACG用) ベルトのリブ山側面(左からACG,A/C,PS用) 写真1枚目はリブ山を正面から見たものですが、白色で示す様に山の頂点の幅が違ってるのが お分かりいただけるでしょうか。2枚目は真横から見たところですが、やはりリブ山の高さが 違ってます。負荷の違いによって摩耗の程度に差が出てるのが良く分かると思います。ACG用は 使用の限界、A/C用は限界が近いですがPS用はまだまだ充分使えます。リブ山の色ですが、ACG, A/C用は黒っぽく焼けたような色になってますが、PS用は新しい時の茶色が残ってます。叉リブ の谷部を見て下さい。A/C用は摩耗が進んで心線部が見えています。ここまで来ればやはり寿命 が近いというのが理解出来ると思います。