オイルシールの寿命

H26/01(233000):17.5年23.3万KmのインテグラDC2です。
きちっと取付けされ問題無く使用されているオイルシールがどの程度の
寿命があるのか、寿命に影響する要因は何が考えられるのか、探って
みました。私のインテグラは今までオイルシール類からのオイル漏れは
有りません。今後30万Kmまで問題無く乗れるのか? 又、30万Kmまで乗る
為にはどのような点に気をつければ良いのか? そのあたりのメンテナンス
上の注意点など知りたいところです。
そもそも車の設計時点ではどの程度の耐久性が考慮されているのか。
○ンダのある技術者の言によれば20年30万Kmを想定して設計していると
聞きました。しかしながら耐久性能は車の使用状況によって変化するものと
考えられますので、この20年30万Kmというのがどのような使用環境を想定
したものなのかを探ってみる事は、大変興味ある問題です。以下に調査の
結果を記します。

オイルシールの構造

1.下図はNOKのオイルシール構造図です。下はシール部の拡大図です。 Aの部分と軸の角度は小さく、Bの部分と軸の角度は大きくなっています。 この形状の違いが外側から内側へ流体が向かうようにしているのです。です からオイルシールの取り付け方向を間違えると漏れを起こす事になります。 2.オイルシールの弾力だけでシールしていると、シールの弾力変化・摩耗・ 軸の摩耗、等でオイルシールと軸の密着に変化が生じます。バネは適度な 状態を保持するものです。 3.リップと軸の間には厳密には微細な隙間があり、内側から供給された オイルの膜がリップを潤滑しています。一方シールは外側からわずかな空気 を吸い込んでおり、この吸い込み現象によって油が外に漏れないわけです。

エンジン系のオイルシール

部 位 材  料 運動 エンジン・フロント カムシャフト ふっ素ゴム 回転 エンジン・リア ふっ素ゴム 回転 エンジン・リア (トラック用) Siゴム 回転 バルブステム ふっ素ゴム 往復動

リップ寿命ー温度の影響

下図は一般的な合成ゴムの温度とリップ寿命に関するNOKの資料です。 FKM(フッソゴム)の耐熱安全温度(連続使用)は200℃です。この図から 赤線で示すFKMの場合は油温130℃以下では10000H以上の寿命となり、 平均車速40Kmとすると走行距離は40万Km辺りとなります。

油低粘度化と油量低減のシールへの影響

機器の摩擦力を低下させるため,潤滑油の粘度を下げて摩擦抵抗を低下 させる手法が一般的に取られ,また,低温度条件での油の低粘度化も進め られています。低粘度油の使用は,油膜厚さが減少し,境界潤滑領域寄り のしゅう動状態となるため,相手軸粗さによっては固体接触領域が増加し 摩耗しやすい傾向となります。 また,オイルシール用ゴム材料は油に浸せきされると,膨潤して強度低下や ゴム材中の可塑剤などの配合剤の抽出を起こすことがあります。ゴム膨潤の 影響は,鉱油に対しアニリン点による予測が可能で,一般にアニリン点の低 い油では膨潤が大きくなる傾向があります。油の低粘度化によりアニリン点 は低下する傾向であり,オイルシール用ゴム材料も低アニリン点に耐える 材料へシフトしてきています。図にアニリン点とゴム材料の適用範囲を示し ますが,近年オイルシール材料はフッ素ゴムの使用比率が拡大されてきて います。油改良時にはゴム材料との適合性確認が必要となります。

FKMオイルシールの特性とリップ過大摩耗の原因

FKMは耐熱性、耐油性、対候性に優れており、現在のところ性能上の問題は 無いように思われます。それではオイルシールとして問題が出るとすれば、 どのような原因が考えられるのでしょうか。取付け上の不備などを除いて 下記にまとめてみました。 (1)潤滑不良:カムシャフトやクランクシャフトは飛沫潤滑になりますが、 油量不足などにより潤滑不良に向う可能性が有ります。 (2)異物のかみ込み:オイルの劣化などによりスラッジによる噛み込みが 過大摩耗の原因になります。オイルの質の選定、適切なオイル交換等が 大切です。 (3)内圧過大:ヘッド内部やクランク室内の内圧が過大になると、オイル シールのみならずヘッドカバーパッキン等からのオイル漏れの原因となり ます。内圧過大の原因はブローバイガス過大によるものと思われます。 ブローバイガス還元回路はエアーフィルターの2次側から新気を吸い込ん でブローバイガスを薄め、PCVバルブによって負圧の力でインマニホールド へ吸い出して再燃焼させています。この回路に詰りが発生したり、連続 全開走行などにより大量のブローバイが発生すると、内圧過大を引き起 こすことになります。 こうしてみてきますと、オイルシール自体の寿命というよりもむしろ、 ユーザの車の管理やメンテナンスの方法による影響が大きいと言えます。 この結果を踏まえ私のインテグラは30万Kmを目指したいと思っています。 何時の日か皆様に良い報告が出来る事を楽しみにしています。 追記:NOKの資料より (1)軸摩耗について 僅かでは有るがリップ、軸ともに摩耗が進行する。 軸摩耗深さ50ミクロン以上になると油漏れが発生しやすくなる。 (2)リップ摩耗 オイルシールは、潤滑が充分な場合は流体潤滑を示しますので、リップ 摩耗は殆ど進行しません。リップ摩耗は、潤滑油糧不足、油の劣化、 油中異物、外部ダストの侵入などにより促進される。図はオイルシールの リップ(軸)摩耗量と油中異物粒径の関係を示します。 油中異物粒径0.3ミクロン程度の比較的小さな異物がリップ(軸)の摩耗量 を大きくします。 (3)オイルシールのしめしろと軸偏心追随限界の関係 オイルシールは、リップが摩耗するとリップしめしろが低下し、軸の 偏心に対する追随能力が低下します。したがって、リップ摩耗による オイルシールの耐久性能は、リップしめしろが軸偏心(軸振れ)に追随 出来なくなった時となります。下図は、摩耗したオイルシールの軸偏心 追随限界の例を示したものですが、リップ摩耗によりリップしめしろが 軸偏心(軸振れ)量の約2倍の値より小さくなると、漏れが発生してます。